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エンジニア採用の稟議|募集開始前に予算と現場の受入れを決める

株式会社adding / 採用内製化支援チーム

エンジニア採用 / 採用稟議

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エンジニア採用
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この記事の更新
2026年10月6日

エンジニア採用の稟議で経営が承認したいのは、単なる「一人増やしたい」という要望ではない。なぜ採用が必要なのか、採用以外に手段はないのか、何に予算を使い、誰が評価し、入社後に誰が受け入れるのか。その一式がつながって初めて、募集を始められる。

そこで、現場の要望を「採用理由・代替策・予算・評価担当・受入れ条件」の承認表に変える。採用担当が書類を整えるだけでも、EMが必要性を訴えるだけでも足りない。EMが職務と評価を具体化し、採用担当が募集・選考・応募情報の扱いを整え、CTOが事業と技術の優先順位、代替策、予算、配置を判断する。残る条件は、募集前に解消すべきものと、承認後に管理できるものへ分ける必要がある。

難しいのは、稟議の決裁と求人公開を同じ瞬間にしてよいかである。採用方針に賛成でも、面接担当や受入れ担当が未定なら、まだ公開できる状態ではない。承認表には決裁欄だけでなく、公開を止める条件まで残す。

エンジニア採用の稟議を承認表に変える

次の表は、公式資料が定める様式ではない。公正な採用選考、募集条件の明示、個人情報の利用目的という一般原則を、社内で募集可否を判断するために記事が組み替えた実務上の提案である。表を作ること自体が法令や指針への適合を保証するものでもない。

承認項目起案時に記録する内容主な起案者主な承認者公開前に残してはいけない未決条件
採用理由解消したい事業・技術上の課題、任せる職務、採用しない場合の影響EMCTO職務と必要能力が結び付いていない
採用以外の代替策配置変更、業務範囲の見直し、既存メンバーの育成などを検討した結果EM・CTOCTO比較せず採用だけが前提になっている
予算の対象範囲報酬条件、採用活動、入社後に必要な環境について、どこまでを承認対象にするか採用担当・CTOCTO対象範囲または決裁者が不明
評価担当と評価基準職務遂行に必要な適性・能力、質問項目、評価基準、各選考の担当者EM・採用担当CTO評価基準または担当者が未定
入社後の受入れ条件配属先、立ち上がりを支える担当、業務を渡せる状態、配置の前提EMCTO受入れ担当または配置方針が未定

各行には、起案者と承認者に加えて「判断結果」「未決条件」「根拠資料」「再確認日」を置く。採用理由の文章だけを厚くするより、誰の判断が止まっているかを行単位で見えるようにする方が、差戻しの対象を特定しやすい。なお、再確認日は放置を防ぐ社内記録であり、公式資料が定める期限ではない。

判断結果は「承認」「条件付き承認」「差戻し」に分ける。承認は、すべての公開条件が決まり、担当者が引き取った状態。条件付き承認は、採用方針や予算の方向性には同意するが、未決条件が残る状態。差戻しは、採用理由と職務がつながらない、代替策との比較がないなど、経営判断の材料が不足した状態とする。この区分も社内運用の提案であり、法的な分類ではない。

条件付き承認を「公開してよい」に読み替えてはいけない。未確定なのが予算、評価担当、受入れ担当、募集条件、応募フォームで示す利用目的のいずれかなら、解消を記録するまで求人公開を止める。経営が採用の必要性を認めることと、候補者に提示できる求人が完成していることは、別の判定だからだ。

採用理由は任せる職務から書く

採用理由には、現在の負荷、採用した人へ委ねる職務、必要能力を記す。何を任せるかが曖昧なままでは、求人の募集条件も面接の評価基準も作れない。EMは、解消したい課題から職務、必要能力、選考で確かめる項目までを一続きにする。より詳しい整理はエンジニアの採用要件を定義する方法と併せると、稟議と求人の間で要件が変わるのを防ぎやすい。

代替策の欄は、採用が適切かを比較するために使う。配置変更、業務範囲の見直し、既存メンバーの育成といった選択肢を検討し、外部から人を迎える判断に至った理由を残す。CTOは技術組織全体の優先順位と照らして承認する。記録の対象は、検討した選択肢、採用しなかった理由、前提が変わったときの再確認先である。

予算欄では、金額とともに決裁対象の範囲を明らかにする。報酬条件と採用活動、入社後に必要な環境を混ぜたままでは、承認後に「含まれると思っていた」というずれが起きる。報酬条件を詰める作業はエンジニアの給与設計で決めるべき条件へつなぎ、稟議には参照する資料名、責任者、未決事項を残す。具体的な金額や効果試算は、承認対象となる自社資料で確認すべきであり、根拠のない相場や採用効果を稟議に足さない。

採用担当・EM・CTOの実務分担

承認表の所有者を採用担当だけにすると、技術職務や受入れ余力が「現場確認中」のまま残りやすい。反対にEMだけで作ると、募集条件の明示や応募情報の取扱いが後工程になりやすい。役割は次のように分ける。

  • 採用担当:募集条件を求人へ反映し、選考手順、連絡経路、応募フォーム、応募情報の利用目的を整える。承認表の版と未決条件も管理する。
  • EM:任せる職務、職務遂行に必要な適性・能力、質問項目、評価基準、面接担当、入社後の受入れ担当、オンボーディングに使える時間と業務を渡せる状態を具体化する。
  • CTO:事業・技術上の採用理由、代替策との比較、予算の対象範囲、配置方針を判断し、条件付き承認に残した事項の解消を確認する。

この役割分担は、出典の一般原則を基にした実務上の提案であり、法令所定の分担ではない。組織によって役職名が異なっても、募集条件、評価設計、予算、受入れの責任者が空欄にならないよう割り当てればよい。兼務する場合は、担当者名に加え、どの立場で何を承認したかを項目別に残す。

引き継ぎでは、了承の記録に根拠資料をひも付ける。たとえば評価担当の行には評価項目を記した資料、募集条件の行には求人原稿、応募情報の行には利用目的の表示文と掲載場所を対応させる。更新時は元の判断を残し、変更した条件、変更者、承認者、再確認日を追記する。これにより、採用方針の承認後に求人原稿だけが変わった場合でも、再承認すべき行を判別できる。

募集前に別枠で確認する公式根拠

社内稟議が通っても、公開する募集条件、選考の設計、応募情報の取得は別途確認が要る。以下は2026年9月21日時点で確認した公式資料の要点である。

厚生労働省の「公正な採用選考の基本」は、「(1)採用選考の基本的な考え方」ア・イで、応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力に基づく基準で選考するという考え方を示している。同資料の「(2)公正な採用選考を行うためには・・・」エ「面接」では、職務遂行に必要な適性・能力を評価する観点から、質問項目と評価基準をあらかじめ決め、適性・能力に関係のない事項を尋ねないよう留意するとしている。承認表で評価基準を公開前条件にする根拠はここにある。担当者の確定は、その基準を実行できる状態にするための本記事上の提案であり、厚生労働省所定の条件ではない。

厚生労働省は同資料の「(2)」ア・ウおよび「(3)採用選考時に配慮すべき事項」で、家族や生活環境など適性・能力に関係のない事項を応募用紙や面接で把握しないことが重要だとし、独自の応募用紙や入力画面にも含めないよう留意を求めている。EMが評価項目を作り、採用担当がフォームへ実装する間で、不要な取得項目が加わっていないかを確認する。

厚生労働省の「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」では、「職業安定法施行規則が改正されました」本文の追加事項として、2024年4月1日から、従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準が募集時等の明示事項に追加されたと示している。有期契約の基準には、通算契約期間または更新回数の上限も含まれる。採用担当は該当する雇用条件に照らして求人原稿を確認し、EMとCTOは業務や配置の変更範囲を決める。稟議の承認だけで明示が済んだことにはならない。

個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、「3-3-3 利用目的の通知又は公表(法第21条第1項関係)」で、個人情報取扱事業者が個人情報を取得した場合、利用目的をあらかじめ公表している場合を除き、速やかに本人へ通知または公表しなければならないと示している。さらに「3-3-4 直接書面等による取得(法第21条第2項関係)」では、入力画面への入力など本人から直接書面等で個人情報を取得する場合、人の生命、身体または財産の保護のために緊急に必要がある場合を除き、取得前に利用目的を明示しなければならないとしている。資料の版表記は平成28年11月、令和8年6月一部改正で、改正日は資料上で日まで確認できない。応募フォームを公開する前に、採用担当は取得方法に応じた利用目的の表示を確認する。

これらは適用条件のある制度・指針であり、承認表のチェックだけで適合を保証できない。自社の募集方法、雇用条件、取得項目に即して公式資料を確認し、必要に応じて専門家へ相談する。

条件付き承認を公開可能へ変える記録

未決条件には、状態だけでなく、解消の証拠と確認者を置く。「面接担当を調整中」で止めず、担当者が確定し、評価基準を共有し、採用担当が選考案内へ反映したことまで記録する。「受入れ可能」も同様に、EMが受入れ担当、配属、渡せる業務を確認し、CTOが配置方針との整合を承認した時点で解消とする。

変更が起きた場合は、影響する行を見極めて再確認する。職務が変われば、必要能力、評価基準、募集条件、配置を対象にする。応募フォームの取得項目が変われば、利用目的の表示と、適性・能力に関係のない項目が含まれないかを確かめる。予算の対象範囲が変われば、CTOの決裁へ戻す。変更の連鎖を記録できれば、承認表を継続的な判断記録として使える。

募集開始の判定は明快でよい。五つの承認項目に責任者と根拠資料があり、公開を止める未決条件がなく、募集条件・評価設計・応募情報の利用目的を適用条件に応じて確認できていれば公開へ進む。どれか一つでも欠ける間は、採用の必要性が承認されていても求人を止める。エンジニア採用の稟議は、採用人数の承認に加え、採用担当・EM・CTOが募集と受入れに責任を持てる状態まで確定して完成する。