エンジニアの複数ポジション選考|候補者の希望と評価を分ける
株式会社adding / 採用内製化支援チーム
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- 2026年10月2日
エンジニアを複数ポジションで選考するなら、「どの職種を希望しているか」と「各職種でどう評価したか」を同じ欄に書かないことが出発点です。候補者がバックエンドを希望していて、選考側がSREの可能性も感じたとしても、希望が自動的に変わったわけではありません。別職種での評価が、そのまま本人の意向にもなりません。
選考表は、本人希望、職種別評価、情報の共有範囲、候補者への最終提案を分けます。採用担当は説明と意向確認、各ポジションのEMは自職種の評価、CTOは競合する評価を整理した最終提案に責任を持つ、という分担にすると、誰の判断かを追えます。ただし、候補者への希望確認と、個人情報保護上の同意が必要かという判断も別物です。
難しいのは、同じ会社の別チームへ情報を渡す場面です。「社内だから自由に共有できる」「別職種だから必ず同意が要る」のどちらかに固定せず、当初示した利用目的、共有先、扱う情報、アクセス範囲を確認して分岐させます。その判断を候補者の印象や口頭の記憶へ埋めず、選考表に残す必要があります。
エンジニアの複数ポジション選考で分ける四つの判断
一人の候補者を複数職種で検討すると、評価会議では情報が一列に混ざりがちです。「第一希望では弱いが別職種なら合いそう」という一文には、本人の希望、第一希望での判定、別職種の仮説、会社からの提案が同居しています。しかも、誰が何を根拠に決めたのかが読めません。
次の選考表は、公式資料の一般原則を基にした実務上の提案であり、原典が定める分類や法的義務ではありません。自社の規程、実際に示した利用目的、選考フローに合わせて項目名と承認者を決めてください。
| 区分 | 記録する内容 | 主な記録者 | 更新するとき | 混ぜない内容 |
|---|---|---|---|---|
| 本人希望 | 応募した職種、併願や別職種検討への意向、説明した内容、確認状況 | 採用担当 | 応募受付時、別職種を提案する前、本人回答後 | 面接官の適性評価、法的同意の要否 |
| 職種別評価 | 職種ごとの評価項目、観察事実、判定、未確認事項 | 各職種のEMまたは指定評価者 | 各選考後、追加確認後 | 他職種の印象、候補者が希望したという推測 |
| 共有・利用 | 当初の利用目的、共有目的、共有先、対象情報、アクセス範囲、目的内か目的外かの確認、必要な対応 | 採用担当と自社規程上の責任者 | 新しい部署や評価者へ共有する前 | 「社内だから問題ない」という一括判断 |
| 最終提案 | 提案する職種、参照した各職種の評価、未確認事項、説明責任者、本人の回答 | CTOなど最終提案の責任者 | 提案を決めた時点、本人回答後 | 過去の本人希望の上書き、各職種評価の改変 |
結論が変わっても履歴は消しません。候補者が別職種の検討を希望したら、最初の希望を書き換えず、新しい意向を追記します。CTOが別職種を提案しても、EMの評価は直さず最終提案欄から参照します。
職種ごとの入口となる要件が曖昧なら、先にエンジニア採用の要件定義|必須条件を絞る7項目と例で、任せる仕事と選考で確かめる内容を分けます。複数ポジションの表は、定義されていない職種を後から当てはめる道具ではありません。
本人の希望確認と法的な同意判断を分離する
候補者へ別ポジションを提案する前に、その職種の仕事内容と選考上の扱いを説明し、検討したいかを確認します。これは候補者との認識をそろえる実務です。一方、個人情報の目的外利用について本人同意が必要かは、利用目的などの条件に基づく判断です。「候補者が興味を示したから、過去の情報をどこへでも共有できる」とは扱えません。逆に、法的な同意が不要と判断しただけで、本人がその職種を希望したことにもなりません。
2026年9月21日時点で、個人情報保護委員会の個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)「3-1-1 利用目的の特定(法第17条第1項関係)」は、本人が一般的かつ合理的に想定できる程度に利用目的を具体化する考え方を示しています。同「3-1-3 利用目的による制限(法第18条第1項関係)」では、特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を扱う場合、法定の例外を除き、あらかじめ本人の同意を得なければならないとされています。
同一事業者内での共有にも条件があります。2026年9月21日時点で、個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A「1-7 個人データの第三者への提供(法第27条~第30条関係)」Q7-2・A7-2は、同一事業者内の他部署への提供は第三者提供に当たらず、第三者提供に関する本人同意は不要と説明しています。ただし、他部署が当初の利用目的の達成に必要な範囲を超えて利用するなら、あらかじめ目的外利用について本人同意が必要です。
したがって、別ポジション検討では次の順に確認します。これは上記の一般原則を選考運用へ落とす提案であり、原典所定の判定票ではありません。
- 応募時に本人へ示した利用目的を確認する。
- 情報を受け取る相手が同一事業者内か、外部かを確認する。
- 共有する情報と、別職種で使う目的を特定する。
- 当初の利用目的の達成に必要な範囲内か、目的外利用かを自社の責任者が判断する。
- 必要な同意その他の対応を終えてからアクセスを付与し、候補者の職種希望は別途確認する。
この順序なら、「別職種を検討したいが情報利用の確認は未了」「利用目的内で共有できると判断したが、別職種は希望していない」という状態を分けられます。個別案件の法的判断は、自社の個人情報保護上の責任者や必要な専門家へ確認してください。
職種別評価は観察事実から作り直す
別ポジションを検討する際、元の面接評価を職種名だけ変えて転記すると、評価の根拠が崩れます。バックエンドとSREで共通して見える経験があっても、任せる職務と評価項目が異なるなら、それぞれの基準で判定します。元の面接で確認できなかった項目は、好意的な推測で埋めず「未確認」とします。
2026年9月21日時点で、厚生労働省の公正な採用選考の基本「(1)採用選考の基本的な考え方」イは、応募者の適性・能力に基づき、求人職種の職務を遂行できるかを基準とする考え方を示しています。「(2)公正な採用選考を行うためには…」エでは、職務遂行に必要な適性・能力を評価する観点から、面接の質問項目と評価基準をあらかじめ決めるよう示しています。
同ページの「(2)公正な採用選考を行うためには…」ア・ウと「(3)採用選考時に配慮すべき事項」は、適性・能力に関係のない事項を把握しないこと、独自の応募書類や入力画面にも含めないことへの留意を求めています。職種別評価欄は、次の四項目に絞ります。この欄構成は、一般原則を選考実務へ当てはめた提案です。
- 評価対象の職種と、その職務に必要な評価項目
- 面接や課題で実際に確認した観察事実
- 評価基準に照らした判定と、その理由
- 質問していない、または判断材料が足りない未確認事項
候補者の私生活に関する情報や職務と関係のない印象は、検討先が変わっても評価材料から除外します。ある職種での判定はその職種にひもづけ、別職種では共通して参照できる観察事実だけを拾い直します。面接記録そのものの作り方は、エンジニア採用の面接評価基準|技術面接を同じ手順で実行すると組み合わせると、事実、判定、未確認を同じ粒度で管理できます。
採用担当・EM・CTOの実務分担
複数ポジションの選考は、全員が同じ候補者情報を見て合議する形にすると、責任も閲覧範囲も広がります。役割ごとに入力欄と決定権を限定します。以下は公式資料の一般原則に基づく実務上の提案で、法令が採用担当、EM、CTOへこの分担を直接義務づけるものではありません。
採用担当
採用担当は、応募時の本人希望を原文の意味が変わらない形で記録し、別ポジションを検討する理由と仕事内容を説明して意向を確認します。同時に、当初の利用目的、共有先、共有対象、アクセス範囲を選考表へ記録し、自社規程上の責任者へ判断をつなぎます。採用担当だけで目的外利用や法的同意の要否を確定する運用にはしません。
各ポジションのEM
EMは、自分が担当する職種について、事前に決めた職務要件と評価基準に沿って評価します。記録するのは評価項目、観察事実、判定、未確認事項です。第一希望のEMが不採用と判断しても、別職種での不採用まで代行しません。別職種のEMも、元の評価者の結論に寄せず、自職種で必要な確認を明示します。
共有された面接記録の不足は、能力不足という判定に置き換えず、追加確認が必要な項目として残します。追加選考を行うか、その負担を含めて提案可能かは、最終提案の責任者へ返します。
CTOまたは最終提案の責任者
CTOは、職種ごとの評価を並べ、確認済みの項目、未確認事項、本人希望を照合します。一つの点数に換算すると、職種ごとの基準と不足情報が見えにくくなるためです。照合結果を基に、会社として提案する職種と説明責任者を決めます。提案を見送る場合も、元の評価を保ったまま理由を最終提案欄へ残します。
CTOが個人情報保護上の責任者とは限りません。個人データの管理責任者、法務判断者、採用上の最終提案者は、自社規程に従って別途明確にします。実務分担を決めただけで法令対応が完結したとは扱いません。
共有範囲と判断履歴を選考表に残す
個人情報保護委員会の通則編は、2026年9月21日時点の「10-2 個人データの取扱いに係る規律の整備」と「10-3 組織的安全管理措置」の表で、個人データの責任者、取扱従業者と役割、取扱範囲、複数部署の役割分担と責任を明確にすることや、利用状況等の記録を例示しています。また「10-6 技術的安全管理措置」(1)アクセス制御では、担当者と取り扱う個人情報データベース等の範囲を限定する考え方が示されています。
この一般原則を複数ポジション選考へ適用する実務案として、共有欄には部署名に加え、共有目的、対象情報、閲覧できる役割、付与前の確認者を残します。別職種のEMが必要とする情報が職務経歴と特定の観察事実なら、閲覧対象もその範囲に合わせます。アクセス権は「別職種を検討する」という結論から自動付与せず、担当する役割と取扱範囲を根拠に決めます。
更新履歴には変更前後の値、変更者、変更理由を残します。この項目構成も法令所定の形式ではないため、自社規程に合わせて責任者が必要な記録を決めます。
最終提案前の確認条件
候補者の希望、職種別評価、共有・利用の判断を個別に読める状態が、最終提案へ進む条件です。会議で人物像を一言に要約すると判断主体が隠れるため、次の条件を順に確認します。
- 候補者へ別職種の仕事内容と選考上の扱いを説明し、意向を記録している
- 各職種が固有の職務要件と評価基準で、観察事実、判定、未確認事項を残している
- 当初の利用目的、共有先、対象情報、アクセス範囲を確認し、必要な対応を完了している
- 最終提案の責任者と、候補者へ説明する担当者が決まっている
- 元の本人希望と各職種の評価を、最終提案で上書きしていない
条件が欠けているときは、未完了の欄に応じて差し戻します。本人への説明は採用担当、評価材料は該当職種のEM、利用目的やアクセス範囲は自社規程上の責任者が確認します。CTOの責任は、それらの作業を一人で引き取ることではなく、会社として提案できる状態に達したかを決めることです。
複数ポジションの選考で明確にすべきなのは、候補者をどこへ配属できそうかだけではありません。本人が何を希望し、各職種が何を根拠に評価し、誰がどの目的で情報を扱い、会社が何を提案したかを別々に残すことです。別職種を検討する場面ほど四区分を崩さず、候補者への意向確認と法的な同意判断をそれぞれの責任者へ渡してください。